ポンプの選定 ~ポンプの種類編~
化学・医薬品・食品プラントの設備担当者の皆さま、ポンプの選定で「どこから考えればいいかわからない」と悩んだことはありませんか? この記事では、日常生活でよく見かける分かりやすい例を使いながら、ポンプ選定の考え方をわかりやすく解説します。
ポンプ選定
プラント設備
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食品プラント
医薬品プラント
📋 目次
① ポンプ選定とは何か
ポンプは「液体を移送する機械」ですが、プラントでは単に「流れればいい」というわけにはいきません。どんな液体を・どこから・どこへ・どれだけの量を・どの程度の圧力で送るかを明確にして、それに合ったポンプを選ぶことが「選定」です。
家庭の水道で考えてみましょう。蛇口をひねれば水が出るのは、ポンプ(給水ポンプや水道局の加圧ポンプ)が適切に選定・運用されているからです。もし弱すぎるポンプなら水が出ず、強すぎると配管が壊れます。プラントでも同じ考え方が基本です。
② 流量と揚程を理解する
ポンプ選定で最初に決める2大パラメータが 流量(Q) と 揚程(H) です。
流量(Q)
単位時間に送る液体の体積(例:m³/h、L/min)。プロセス要件から必要な移送量を算出します。
揚程(H)
ポンプが液体に与えるエネルギー(水頭)のことで、単位はメートル [m]。以下の要素の合計です。
| 揚程の要素 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 静揚程 | 高さの差(位置エネルギー) | 吐出側タンクが10m高い → 10m |
| 圧力揚程 | タンク間の圧力差 | 吐出タンクが0.2MPaG加圧 → 約20m |
| 摩擦損失揚程 | 配管・バルブ・継手での圧力損失 | 配管長・径・流速から計算 |
高層マンションに水を送るポンプは、低層階より高い揚程が必要です。さらに配管が細く長いほど摩擦損失が増え、よりパワーが必要になります。
③ 流体の性質と影響
水だけを扱うわけではないプラントでは、流体の性質がポンプ選定に大きく影響します。
主な流体特性とその影響
- 粘度:高粘度液(シロップ・スラリーなど)は摩擦損失が大きくなる。遠心ポンプは高粘度に弱く、容積式ポンプが有利なことも。
- 密度(比重):ポンプの軸動力に直結。同じ流量・揚程条件では、比重が大きいほど必要軸動力は増加する。
- 腐食性・スラリー:材質選定(SUS、ハステロイ等)や耐摩耗ライニングが必要。
- 温度:高温液は飽和蒸気圧が上昇し、NPSHaが不足しやすくなるため、キャビテーションリスクが増す。また、シール材の耐熱性も確認が必要。
④ ポンプの種類と使い分け
大きく分けると 遠心ポンプ と 容積式ポンプ の2系統があります。
| 種類 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 遠心ポンプ(渦巻ポンプ) | 構造がシンプル、大流量向き。一般に流量が増えると揚程は低下する。 | 低粘度・大流量・連続運転 |
| ギヤポンプ(容積式) | 流量が回転数で決まるため定量性が高い。高粘度にも強い。 | 高粘度液・定量移送・少量 |
| ダイヤフラムポンプ(容積式) | ダイヤフラムによって駆動部と液体が隔離される構造。 | 危険液・腐食性液・スラリー |
| チューブポンプ | チューブを絞ることで送液。汚染リスクが極小。 | 医薬・食品・少量精密送液 |
| スクリューポンプ | 脈動が少ない。超高粘度・固形物含有液にも対応。 | ペースト・スラリー・食品 |
⑤ キャビテーションとNPSH(有効吸込みヘッド)
ポンプ選定の落とし穴として キャビテーション があります。液体がポンプ吸込み部で気化し、気泡が発生・崩壊する現象で、騒音・振動・損傷の原因になります。
キャビテーションを防ぐために使う指標。
- NPSHa(Available): 配置や液条件から決まる「実際にポンプに与えられる余裕」
- NPSHr(Required): ポンプメーカーが指定する最低限必要な値
NPSHa > NPSHr(+余裕) になるよう設計することが必要です。
麦茶をストローで飲むとき、ストローを吸いすぎると「ズズッ」と空気を吸い込みます。これがキャビテーションのイメージです。液面が低すぎたり、液が熱かったりするとポンプでも同じことが起きます。
⑥ ポンプ選定チェックリスト
- 移送流量(Q)は決まっているか
- 全揚程(吸込側と吐出側の全エネルギー差)を計算したか
- 液体の種類・粘度・密度・温度は確認したか
- 腐食性・有害性・固形物含有はないか
- NPSHavを計算し、選定ポンプのNPSHreと比較したか
- 運転モード(連続・間欠・定量)に適したポンプタイプか
- メンテナンス性・スペアパーツ入手性は確認したか
- 防爆エリアの場合、電動機の防爆仕様を確認したか
📌 まとめ
- ポンプ選定は 流量(Q) と 揚程(H) の把握から始める
- 流体の 粘度・密度・温度・腐食性 によってポンプ種類が変わる
- 遠心ポンプは大流量向け、容積式は高粘度・定量向けと使い分ける
- キャビテーション対策として NPSHa > NPSHr を必ず確認する
- 選定後は材質・防爆仕様・メンテナンス性も忘れずにチェック
本記事は「プラント・溶接のケイエイチ工業」さんのYouTube動画をもとに構成しています。詳細は動画をご覧ください。
